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2022.10.14

2022.11.21

社長コラム

社長コラム:ALTIM(アルティム)を始めとした直接接合技術の現在と未来について

3月の投稿から半年が経ちまして2度目の寄稿になります。睦月電機㈱代表の睦月でございます。前回はALTIM(アルティム)の開発経緯について書きました。今回は私が考えるアルティムを始めとした直接接合技術の現在と未来についてウンチクを語りたいと思います。

前回同様、ご興味のない方はどうぞお読み飛ばしください。

1.『工業デザインに新たな可能性を』

金属の起源は紀元前数千年前に遡るほど太古の時代より人類はノウハウを蓄積してきていますが、プラスチックについてはそもそも合成素材として発明されたのが1800年代、普及期が1900年代とたかだか200年前後の歴史しかありません。この200年前後の期間をかけて人類はプラスチックの素材技術・加工技術を磨き上げ、社会を豊かにしてきました。

そしてこれら金属とプラスチックの接合方法としては、旧知の締結ネジ工法や接着剤工法を発展させることで対応してきました。

つまり、接合には必ず3つの物質(金属、プラスチック、ネジや接着剤等の中間体)が必要でした。アルティム技術で接合した金属とプラスチックの接合品を始めて見て触れたときの、カラダの中に電気が走るような感覚を今でも覚えています。2つの異なる物質に対して中間体を使用せずにたった数秒で目の前で直接一体化できるという点で、工業デザインにおいて新しい可能性を創り出す未来を強く感じました。※ここでいうデザインとは意匠デザインだけでなく機能デザイン(封止性・構造等)も含めています。

もちろん、まだ課題は多くあります。そして私たちは自社開発にこだわっています。

2.自社開発へのこだわり

アルティムを開発する以前よりインサート成形を用いた樹脂金属接合技術は存在していますが、それを構成する三大要素である①金属への表面処理 ②インサート成形 ③それに用いる金型設計製作 を一貫して自社開発する企業は当社以外にありませんでした。インサート成形接合の性能・信頼性は、この3つの因子の掛け算で決まります。どれか1つでも最適化されていないと接合性能は発揮されません。

アルティム接合技術は①金属へのレーザー処理 と ②加熱圧着工程の2工程で構成されています。当社はこれまで同様、この2つの重要工程について必ず自社内で製造条件・設備仕様を最適化します。高効率が求められる現代において分業化は常識であるにも関わらず、なぜ効率が低くコスト負担も大きい自社開発に当社がこだわるのかご説明したいと思います。

日本古来の複合化技術の代表的な1つに「木組み技術」があります。釘や金物を一切使わずに宮大工さんが巧みに木と木を繋ぎ合わせていく技法で、個人的にとても美しいと感じる接合技術です。無駄がなく、環境に優しく、そして美しい。木という自然素材を活かしきる素晴らしい技法と思っています。この木組み技術が神社や寺院にのみ使われていた頃は、どの種類の技法を用いるかの判断工程(約200種類もあるそうです!)も、木を所定の形状に削る工程も、組み付ける工程も、仕上げる工程もすべて1人の職人が通し作業として行っていました。当時は特殊技術であり、まだ普及していなかったからです。江戸時代以降に民家にも木組み技術が取り入れられて普及段階になると、徐々に工程毎に職人が分業されるようになりました。実績が積み上がって普及段階になり、各工程の製造ノウハウ・工程間の関連性に対する知見が充分に蓄積された状態で初めて分業化が進みます。木材切削工程のように一部の工程は機械化され、大量生産化されています。

このように、非効率な多能工によるノウハウ蓄積の結果として分業化・セル生産化等の高効率生産システムへと発展していくものであり、時代が変わって関連技術が近代化してもその順番は変わらないと私は考えています。

話を戻しまして・・・樹脂金属の接合技術はまだ分業化する段階ではないと私は考えています。各工程の長所短所・関連性を正しく詳細に把握し、改善点を積み上げていくことが現時点での開発元としての責任だというのが私の持論です。前項で述べたように工業デザインに新たな可能性を創り出し、プラスチックの利用分野を押し広げる覚悟だからです。当社の開発メンバーはいずれ来るであろう分業化の未来を想像しながら、目前の課題に取り組んでいます。

先日テレビ番組である日本の技術者が言っていた言葉がとても印象に残っています。『作り方を作れるのが本当の職人だ』と。私たちはそのような職人魂をもって、アルティムの可能性を広げて参ります。是非皆様方からのご指導、ご支援のほどお願い申し上げます。

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