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金属と樹脂をそのままピタッ!金属と樹脂の新しい接合技術「ALTIM」

2026.04.17

2026.04.17

パッキン・ガスケット・シールの違いとは?

パッキン・ガスケット・シールの違い

パッキン・ガスケット・シールの違い

封止する部品として、「パッキン」「ガスケット」があります。
これらはシール材とも言われますが、それぞれの役割や意味が異なります。
日本では、この「パッキン」「ガスケット」に加え、「シール」が混同されやすい傾向にあります。
その理由は、だいたい次の事情が重なっているからです。

まず、もともとの英語圏でも「Seal(シール)」はかなり広い言葉です。
これは「密封そのもの」を指しますし、「密封部品」も指します。また、「オイルシール」のような特定部品名にもなります。
つまり、英語でも厳密な部品名と一般概念が重なっています。
そのうえ日本では、

Packing(パッキング/パッキン)
Gasket(ガスケット)
Seal(シール)


が別々の時代・別々の業界から入ってきて、現場で少しずつ意味がずれてきました。
工学的に言うと、

Packing:詰め物系。昔はグランドパッキンのような用途が中心。
Gasket:静止面同士の間に挟む面シール
Seal:密封全般、またはオイルシールなどの機能部品


という整理となります。

【パッキンとガスケットの主な用途】
パッキン:ポンプの軸やピストンなど、動く部分(摺動面)の漏れを防ぐ。
ガスケット:フランジやカバーなど、動かない部分(静止面)に挟む。

日本の現場では、Oリング自体を「パッキン」と呼んだり、ガスケットを「シール」と呼んだりすることがあります。これは規格語ではなく、現場通称として使われているところがあるからです。

また、日本語の「パッキン」は、英語の「Packing」より意味が広がっています。
英語話者に、「This machine uses a packing here」と言うと、相手はグランドパッキンや詰め物系を連想しやすく、日本人が言う“なんでもパッキン”とは、ずれてしまいます。
ここが典型的な和製工業用語化です。

このような日本での混同の理由は

①Seal:もともとの英語圏でも広い意味の言葉。
②Packing:日本で意味を拡張。
③現場通称が図面語・規格語より強い。
④漏れ防止という機能で一括理解されやすい。


この4点が大きいと考えます。

同じような和製工業用語で、海外では通じにくい言葉は他にもあります。
いくつか代表例を挙げます。

ボルトとねじ

日本では、「ボルト」「ねじ」「ビス」の使い方が曖昧です。
しかし英語では、

Bolt(ボルト)
Screw(スクリュー)
Machine screw(マシンスクリュー)
Set screw(セットスクリュー)
Stud(スタッド)


など、細かく分かれています。
日本人が「このボルトを締める」と言っているものが、英語では「screw」のことも多々あります。

【ボルトとスクリューの違い】
ボルト:ナットと組み合わせて使い、部材を挟み込むもの。
スクリュー:それ自体を部材にねじ込んで固定するもの。

日本では「頭の形(六角ならボルト、十字溝ならネジ)」で分けがちですが、英語では「固定の仕組み」で呼び分けます。

「テンション」を張力一般に使う

日本では「テンションをかける」で通じますが、英語では文脈次第です。
機械要素としては、

Tensile force(引張力)
Preload(予張力)
Tension(張力)
Stress(応力)


を使い分けます。
日本語では、これらが曖昧になりがちです。

「精度」とAccuracy/Precision

日本語の「精度」は非常に便利ですが、その分、曖昧になることがあります。
英語ではしばしば、

Accuracy:真値への近さ(正確度)
Precision:ばらつきの小ささ(精密度)


を分けます。
日本では「精度が高い」で両方を済ませてしまい、議論が噛み合わない場合があります。

「耐熱」とHeat-resistant/Heatproof/Thermal stability/Thermal shock resistance

日本語の「耐熱」の意味も広すぎていることがあります。
英語では、

Heat-resistant:一時的に高温に耐える(耐熱性)
Heatproof:長期使用温度が高い(防熱性)
Thermal stability:熱で劣化しにくい(熱安定性)
Thermal shock resistance:熱衝撃に強い(耐熱衝撃性)


を分けて表現されます。
特に、材料研究においては誤解の元となるため、言葉の使い方に注意が必要です。

なお、英語の技術文書(材料スペック)では、「Heatproof」はあまり使いません。
「Waterproof(防水)」のように、一般用語に近い響きがあるためです。
図面やスペックシートでは、「Service Temperature(使用温度範囲)」や「Thermal Resistance(熱抵抗)」で示すようです。

「粘度」とFlowability/Fluidity

「粘度」に関する用語は、樹脂・接着・塗工の現場で多く使われますが、曖昧になることがあります。
「Flowability」は粉体の流動性、「Fluidity」は液体の流動性を表しますが、例えば、「流動性が高い」を、そのまま英語で「High fluidity」と書くと、少し曖昧です。
工学的には、

Processability:溶けた材料の加工のしやすさ(加工性)
Rheology:流動の仕組み(流動特性)
Viscosity:液体の流れにくさ(粘度)
Wetting:固体表面への親和性(濡れ性)
Spreadability:表面への広がりやすさ(展延性)


など分けて考える必要があります。

【豆知識】

「Processability(加工性)」という大きな目的の中に、その評価指標として「Flowability(流動性)」があり、それを支配する物理的な挙動が「Rheology(流動特性)」、そのRheologyを構成する要素が「Viscosity(粘度)」や「Thixotropy(揺変性)」です。

◎目的

加工性:Processability
その材料を使って、目的の形に成形できるかどうか。
例:金型の隅々まで材料が届く、糸を引かないなど

◎評価指標

粉体の流動性:Flowability
液体の流動性・流動度:Fluidity
樹脂が溶融した際の流動性:Melt Flow
加工中の「流れやすさ」の度合い。
MFR(メルトフローレート)やスパイラルフロー試験などで数値化される。

◎物理的挙動

流動特性:Rheology
力が加わった際、材料がどう変形し、どう流れるかという学問・挙動そのもの。

◎支配因子

粘度:Viscosity 流れへの抵抗。
揺変性:Thixotropy かき混ぜると柔らかくなる(粘度が下がる)性質。
弾性:Elasticity 変形したあと元に戻ろうとする性質。

このように流動性が良くなるのは粘度だけではなく、様々な要因があるのです。

「溶着」をWeldingにしてしまう

日本語の「溶着」は便利ですが、英語では、

Welding(溶接)
Fusing(溶着)
Bonding(接着)
Thermal joining(熱接合)
Heat sealing(熱封止)


と、大きく違いがあります。
特に金属―樹脂系で「Welding」と言うと、相手によっては金属溶接という意味に引っ張られるかもしれません。

「接着している」という表現

日本語では「接着」と広く使われますが、英語圏で接着といえば、「Adhesive bonding(接着剤を用いた結合)」が連想されやすいです。
しかし、実際にモノがくっつくには、下記の作用が関係します。

Mechanical interlocking:機械的作用(インターロック効果)
Interfacial interaction:物理的・化学的相互作用(分子間力や水素結合・共有結合など)
Diffusion:互いの分子どうしが混ざり合う作用(拡散結合)
Wetting:濡れ広がる作用


正確には、これらの作用を区別して伝えたほうが通じます。

なお、金属と樹脂との接合に限定すれば、「Diffusion」は起こりません。
また「Wetting」は、濡れ広がる作用であっても密着する意味まではありません。

【豆知識】

日本では、接着・接合の作用として、「Anchoring(アンカー効果)」が使われることがありますが、英語圏や学術界における「Mechanical Interlocking(インターロック効果)」の一つの比喩(Anchor:錨・フックのような形)として表現されているものです。厳密にはインターロック効果とは異なります。

海外における「通じそうで通じない」表現

例えば、海外でも「Seal(シール)」は非常に意味が広いため、海外の技術者は図面や仕様で、

Packing(パッキン)
Gasket(ガスケット)
O-ring(Oリング)
Lip seal(リップシール)
Mechanical seal(メカニカルシール)


といった具体名を使います。
つまり、日本だけではなく、曖昧な用語をそのまま使うと、どの国でもミスマッチが生じます。
実務上、混同を避けるには下記のように整理して記述することが重要です。

<例>
機能名:Sealing, Sealing performance
部品一般:Seal component, Sealing element
静止面の挟み込み:Gasket
軸・往復部・回転部の密封:Seal, Lip seal, Mechanical seal(など具体名に)
詰め物系:Packing

日本語の「パッキン」は図面や技術文書ではできるだけ避け、具体名に置き換えると良いでしょう。
「ガスケット」、「Oリング」、「オイルシール」、「グランドパッキン」など、具体的に書き分けることが、ミスを防ぐ基本となります。

パッキン・ガスケット・シールの違い

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