TECH TOPICS
技術トピックス
■注目の技術トピックス
» 水冷式ヒートシンクを使った熱対策
» オートクレーブ滅菌と異種材料接合
» ペルチェ素子を使った水冷式の冷却に必要なこと
» リチウムイオン電池(LIB)の構造とは
» 熱交換における接合技術の役割
» バスバーを端子台に取り付ける目的とは
» 放熱と絶縁を両立するヒートシンクと樹脂との一体化
» 高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)にも対応する金属+樹脂の直接接合
2026.01.15
2026.01.15
水冷式CPUクーラーの現在地
― 高発熱時代の冷却技術 ―
コンピューターの動作によって発生する熱。
高すぎる熱はシステム全体の性能と寿命に影響が出てしまうため、冷却は重要なテーマです。
特に、コンピューターの主要な構成要素であるCPUは、機器制御のほとんどを担うため、高温になるとパフォーマンス低下につながってしまいます。
その発熱を抑えるのが、CPUの冷却装置「CPUクーラー」です。
CPUクーラーには、空冷式と水冷式の2種類があります。
より冷却性能の高い水冷式が求められている一方、空冷式においても、高性能で水冷式に匹敵する技術も開発されていますので、用途に応じて使い分けられていくでしょう。
「どのような使い方をしたいか」によって、適切な冷却方式を選ぶことが、熱設計において重要な視点でもあります。
CPU冷却を取り巻く環境変化
CPUの温度管理は、コンピューターの安定性と長寿命化のために不可欠です。
しかし、高性能なCPUの需要、例えば、
・大規模なソフトウエア開発
・AIの進化に伴う膨大なデータ処理
・ゲームや映像など高精度なクリエイティブ制作
・3DCGなどのレンダリング
・解析やシミュレーションの膨大な計算処理
などによって高負荷・長時間稼働が増加すると消費電力が増え、発熱量も増大する恐れがあります。
そのため、高性能なCPUほど冷却設計が重要と言えるでしょう。
この背景の中で、空冷式に代わる手段として「水冷式CPUクーラー」が普及しつつあります。
水冷式CPUクーラーの仕組み
空冷式CPUクーラーは、ヒートシンクと冷却ファンで構成されています。
一方、水冷式CPUクーラーは、
熱吸収:
水冷ブロック内部を流れる冷却液がCPUの熱を吸収し、ポンプによってチューブを循環。
放熱:
冷却液がラジエーターへ送られ、ファンによって空気中に放熱。
循環:
冷やされた冷却液は、再び水冷ブロックへと戻り、CPUの熱吸収を繰り返す。
といった仕組みとなっています。
【水冷式CPUクーラーの基本構成】
①冷却液(クーラント)
水冷ブロック・チューブ・ラジエーターを循環し、熱を吸収・移動する媒介。
一般的には、腐食防止や抗菌、凍結を防ぐ添加物が含まれた専用の冷却液が使われます。
②水冷ブロック(水枕)
CPUから熱を効率的に吸収し、冷却液に熱を伝える部品。
熱伝導率の高い銅やアルミニウムなどの金属素材が使われています。
③ポンプ
冷却液を循環させ、熱をラジエーターへ運びます。
ポンプと水冷ブロックやコールドプレートが一体になった水冷ヘッドもあります。
④チューブ
各部品をつなぎ、冷却液を循環させます。
CPUの熱を吸収した冷却液がラジエーターまで運ばれ放熱。
そして、冷えた冷却液を水冷ブロックまで戻します。
⑤ラジエーター+ファン
温まった冷却液の熱を放出する放熱ユニット。
空気との熱交換で、ラジエーター内の熱を外部へ逃がします。
ファンの風によって冷却効果をさらに高めます。
現在では、これらを一体化した「AIO(All In One)水冷システム」も出てきています。
水冷式CPUクーラーの基本思想
水冷式CPUクーラーは、「熱をその場で逃がす」のではなく、「熱を運んで逃がす」仕組みです。
空冷式は、CPU直上でヒートシンク+ファンにより放熱するのに対し、水冷式は、CPUの熱を冷却液で別の場所に設置したラジエーターまで運び放熱します。
水は空気に比べて熱伝導効率が良いことから、同じ温度上昇でもより多くの熱を運べます。
これが水冷式CPUクーラーの物理的アドバンテージです。
水冷式CPUクーラーの特徴
①高い冷却性能
水は空気よりも熱容量・熱伝導効率が高いため、高負荷時でもCPUの温度を安定させやすいのが特徴です。
②静音性の向上
空冷式CPUクーラーの場合は、CPUの熱を直接ファンで放熱するため、音が大きくなりがちですが、水冷式CPUクーラーの場合は、効率的に放熱できることからファンの回転数を低く抑え、より静かな動作が可能です。
③意匠性
水冷式CPUクーラーは、CPU周りのクリアランスを比較的確保できるため、PCケース内のすっきりとした見た目を実現できます。
また、ポンプの色にこだわったり、パーツをLEDで光らせたりなど、デザイン性を重視する自作文化とも親和性が高い点が特徴です。
水冷式CPUクーラーの課題
①コストの高さ
水冷式CPUクーラーは、部品点数が多く仕組みが複雑で高性能なため、空冷式CPUクーラーより価格が高い傾向にあります。
②PCケース内の設置制約
ラジエーターが大きいほど冷却性能が高くなりますが、サイズによっては、小型ケースへの搭載が難しい場合があります。
③液漏れリスク
冷却液を循環させる構造上、経年劣化によって、チューブの接合部やラジエーターから液漏れする可能性があります。
特に、漏れた冷却液がCPUについてしまうと、コンピューターがショートしてしまい、故障につながるリスクがあります。
設計・品質は大きく改善されていますが、ゼロリスクではないため注意が必要です。
水冷式の課題に対応する接合技術
水冷式技術は、この高発熱時代に登場し、PC用だけにとどまらず、半導体CPUやデータセンター、AI分野のハードウエア、車載電子機器など、より高度な用途への展開が期待されます。
そのため、信頼性・コストという課題を乗り越える「熱設計」が求められるでしょう。
「金属と樹脂の直接接合ラボ」を運営する睦月電機では、異種材料の中でも金属と樹脂の直接接合技術を研究開発しています。
一見関係がない技術のようですが、実は水冷式による冷却部品に関するお問い合わせをいただきます。
例えば、水冷式CPUクーラーの金属部材である水冷ブロックを一部樹脂にすることで、コストダウンにつなげる一方、金属と樹脂との接合部からの液漏れを防ぐ必要があります。
当社の加熱圧着接合技術「ALTIM®」は、高気密な接合を実現。
金属と樹脂を複合化した信頼性の高い水冷ブロックを製作することが可能です。
また、ポンプと水冷ブロックやコールドプレートを一体化した水冷ヘッドでは、金属部品と樹脂部品をボルト締結している場合があり、これを直接接合することによって、部品点数削減も可能です。

当社の接合技術による水冷用接合サンプル

当社の接合技術による水冷用接合サンプル
水冷式CPUクーラーにも対応する加熱圧着接合技術「ALTIM®」
水冷式CPUクーラーは高い冷却性能が特徴ですが、液漏れが信頼性を左右するため、接合部の工法も重要となります。
その課題に対応する技術の一つが、当社の加熱圧着接合技術「ALTIM®」です。
接着剤レス・ボルトレスで金属と樹脂をそのままピタッと接合。
金属と樹脂が組み合わさった水冷式CPUクーラーにも、この接合技術が役立ちます。
独自のレーザー技術で金属表面を粗面化。そこに樹脂部品を加熱圧着することで、高強度・高気密な接合を実現します。

CPUクーラーやヒートシンクなどで、水冷式による熱対策を検討される場合には、ぜひご相談ください。

