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技術トピックス

2022.04.08

2022.11.17

社長コラム

社長コラム:ALTIM(アルティム)開発の経緯と目標

はじめまして、睦月電機の代表を務めております睦月伸季と申します。

これまでは技術的な内容のコラムが多かったと思いますが、今月号は少し趣向を変えまして、当社が樹脂金属の直接接合技術を事業化するに至った経緯や思いについて寄稿することに致します。ご興味がない方は遠慮なく読み飛ばしてください。

樹脂金属の直接接合との出会い

どのような経緯で直接接合と出会ったのか?

実は当社内でも当時のことを知るスタッフはあまり多くありません。今から30年近く前、前社長(現 会長)が現役社長時代に、新聞記事に小さく小さく掲載された紹介記事が前社長の目に留まったことからスタートしました。岩手県工業試験場が開発した樹脂と金属の接合技術の新聞記事を手に、前社長は「これだ!」と心の中で叫びました。金属と樹脂は水と油のように親和性が低いにも関わらずそれが接合するという記事に大変驚き、すぐに連絡を取ったとのことでした。

射出成形加工を本業としていた私たちはそこから地道な基礎研究を続け、2012年にインサート成形接合の量産化に成功いたしました。

インサート成形接合の開発、そしてALTIM(アルティム)接合技術へ

インサート成形接合の開発成功の肝は、①化成処理をベースとした金属への表面処理技術、②その金属部品をインサート成形するための金型技術、③材料毎に条件最適化した射出成形技術、これら3つの要素技術を高度化したことにあります。

当社の特徴は、これら3つの要素技術すべてを自社内で開発・量産対応したことです。それぞれの専業企業が複数社連携して接合部品を製造するのが一般的ですが、それでは製造条件の最適化が難しいだけでなく、品質トラブルが発生した時の要因が分析しにくい等のデメリットがありました。

そのため弊社では、表面処理・金型製造・インサート成形まで一貫受託加工を提供することで、お客様の声に対応いたしました。このことがインサート成形接合の開発成功までに長い年月が必要だった最大の理由です。

しかし、このような一貫受託加工式のインサート成形接合でも欠点はありました。それは①製造時の工程管理が複雑、②大型部品に適用しにくいという点です。特に②で挙げた大型部品は、インサート成形に使用する金型サイズが大きくなり均一な温度管理が難しいことや、接合面積が大きくなると樹脂の固化収縮量も大きくなるため接合部品が反りやすいなどの課題が山積していました。したがって、大型部品についてはインサート成形接合の実用化までは至りませんでした。

ALTIM(アルティム)接合の開発に着手した動機は、これらインサート成形接合の課題を解決するために他なりません。前述の①(工程管理の複雑さ)に対してはレーザー加工を用いた金属表面処理の開発を、そして②(大型部品への不適合)に対してはインサート成形不要の誘導加熱&加圧加工の開発を行いました。その結果、それぞれで接合強度を最大限に引き出すことに成功し、2021年にALTIM(アルティム)接合技術が誕生しました。

射出成形加工を本業とする当社がインサート成形を必要としない接合技術に多くの開発資源を投じることは、一見、ナンセンスに思われる方々もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、私たちは射出成形・金型製作の本業メーカーとしてインサート成形接合のメリットとデメリットを熟知していたからこそ、その課題を克服したALTIM(アルティム)接合技術を開発できたのだと思っています。そして何よりも、直接接合技術をお客様が求めるニーズに近づけていくことが最大の開発の動機でした。

ALTIM(アルティム)接合技術は偶然生まれたわけではなく、20年以上の歳月をかけて直接接合技術のノウハウと実績を蓄え、そして何よりもお客様の声・課題点を解決してきた過程で誕生した技術であることがお分かりいただけましたでしょうか。もちろんALTIM(アルティム)接合技術もまだまだ発展の余地がありますので、より多くのお客様のニーズに対応できるよう更なる改良・開発に全力を注いでまいります。是非色々なご意見、ご質問等をお聞かせいただければ幸いです。

大きな目標に向かって

私たちはALTIM(アルティム)接合技術を活用し、「製造時の排出CO₂削減」を実現することで社会の発展に貢献したいと考えています。ALTIM(アルティム)による樹脂と金属の直接接合は、接着剤やボルト締結と比較して部材点数削減や軽量化を実現し、さらに消費電力削減による製造時の大幅なエネルギー削減が可能です。

ホンの少しだけど世の中を変えることができるかもしれない・・・そんな日を夢見て私たちは歩んでまいりたいと考えています。


>>ALTIM(アルティム)について、詳しくはこちら!

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