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2022.06.06

2022.11.17

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接合、溶着、溶接、締結... 「材料の一体化」の呼び名

2つ以上の異なる材料を一体化(複合化)する場合、その方法には様々な呼び名があり、ALTIM(アルティム)のような新技術を紹介する場合、どのような呼称を用いるか迷う場合があります。


そこで、一体化する技術の名前と意味を調べて見ました。

1.接合 joining, bonding

二つ以上の物体をつなぎ合わせる工法であり、その工法が終了した後もつなぎ合う作用が継続する工法や物体に関して広範囲の意味を含んでいるものと考えられます。


従って、以下に述べる言葉を包括した、最も広い言い方だと考えています。ちなみに英語で接合はjoint、接合法はjoining methodです。

2.接着 adhesion

二つの物体が接したときに分子を引き付ける力で起こる接合現象とあり、複合化する2つの物体間に、イオン結合、共有結合、水素結合、ファンデルワールス力、静電力などの化学的相互作用が働き一体化し接合することを言うようです。


しかし、これではガラスについた水滴も、氷に張り付いた手も、静電気で下敷きに張り付いた髪の毛も全て接着したことになり、感覚的に合わないような気がします。


私は「接着剤を使って一体化する工法」を接着と言っています。調べて見て分かったのですが、接着に関して意味が明確に定まっておらず、非常に広範囲の内容を網羅しており、技術の曖昧さを物語っているような気がします。(あくまで個人の感想です)


日本接着学会を見る限り、化学的な相互作用が明確に確認されなくても、存在可能性がある場合、学会内での発表は問題ないようです。接着という意味はかなり懐が広いため、結合と混同される場合があるようです。 ちなみに英語で接着剤はAdhesiveです。

3.粘着 adhesion

接着の一種であり、特徴として水、溶剤、熱などを使用せずに、常温で短時間、僅かな 圧力を加えるだけで接着させるもののようです。接着の意味が広範囲なため、このような細分化が必要になったのかもしれません。


粘着に関して個人の感覚としては、セロハンテープや梱包テープのような粘着剤(粘度が比較的低いポリマー)を用いて接着するものを言うような気がします。ただこの場合でも粘着テープというよりは接着テープと言ってしまいます。

4.固着(付着)sticking

学生時代、固着と接着との違いは、固着(付着)は二つの物体が接したときに人が意図せずにくっついてしまう現象で、接着は人が制御してくっつけることだと教わりました。例えば、金属の蛇口に付けたゴムホースが長い年月の間にくっついて取れなくなるのは固着であり、タイヤの中のスチールベルトとゴムとを加硫時にくっつけるのは加硫接着と言っていますので、先生は正しいと思っていました。ところが調べて見たところ、このような意味は書いておらず、接着剤によって他のものにしっかりくっつくことと書いています。


しかし用例をよく見ると、ほとんどが意図せずにくっついて動かなくなることを固着と言っています。 多くの研究者が、自然に起こる固着現象を見出し、制御できるようにして新たな接着技術として技術開発しています。この様に自然にある固着現象を見つけることが接着現象を見つける第一歩かもしれません。

5.溶着、溶接 welding

二つの物体を互いに溶融混合した層を作り結合する方法で、一体化後に溶融部を外観より確認できるものを溶接、溶融部を外観で判別できないものを溶着と呼んでいるようです。一方で熱可塑性のプラスチックや非鉄金属を互いの材料間に熱を持たせて溶融し、圧力を加えて溶け合った部分を合わせ結合する工法である、ともあります。


前者の場合であれば、接合部分が見えるものは金属であろうが樹脂であろうが溶接になってしまい、後者の場合、アルミやチタンの場合は溶接とは言えないことになります。また、樹脂の場合、二つの樹脂間に溶剤を挿入して両樹脂を溶解して結合することも溶着と言っています。


個人的には、「二つの金属を溶融一体化することを溶接、二つの樹脂を溶融一体化あるいは溶解一体化することを溶着」と呼んでいますが、皆様はいかがでしょうか?ちなみ、英語では溶着も溶接もweldingです。

6.締結 fastening

文字通り、二つの物体をネジやリベットで締め込み結びつける結合方法で、昔から用いられる技術です。最近はスナップフィットのようなフックを用いた締結方法も多くなっています。


異種、同種を含めて多くの素材が締結により一体化されていますが、その研究は大学や研究機関よりも民間企業の方が進んでいるような気がします。

7.圧着 crimping, pressure bonding

二つの物体を加圧することにより隙間なく一体化し、圧力を取り去った後でも一体化が継続する接合方法で、一般的には二つの間で化学的相互作用の有無は無関係です。従って、接着も無関係なため、圧着よりも圧合のような気がします。(個人的な見解です)


なお、溶接工程で加圧する場合は圧接と言い分けているようです。

8.その他

その他にも2つ以上のものが合わさり固定される状態を表す言葉には、定着(fixing)、密着(adherence)、嵌合(table)、癒着(Adhesion)、融着(Fusion)等、たくさんの言葉があります。

当社の接合技術 "ALTIM"の分類

それではALTIM(アルティム)はどの分類に入るのか?


接合原理はアンカー効果が主ですが、化学的相互作用が全くないことの証明がなされてませんので、完全に接着でないとは言い切れません。しかし今のところ間違いないのは金属と樹脂とを加熱と加圧を用いて直接接合する技術である、ということで、heat and press-assisted direct joining method で良いでしょうか?


言葉選びは研究と同様に難しいです。


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